「梅はええにほいするわぁ」
そう言いながら和服の子どもが散歩してる。梅観茶会なんかが開かれたんだろうなぁ。お茶の文化はいまでは女性のもんになったけれど、戦国時代は男性がこのんでお茶会をしてたわけだ。
利休好みの一輪挿し、なんて言葉があるが、ほんのひと花咲かせるだけで季節を感じるこまやかさ。それになにを、会した人がおもうか。そんな情景を好んでいたのが私たちの先祖なんだろう。その文化はいまでも続く。
「なんの鳥がおるん?」
「鳴いてないねぇ、鶯かなぁ」
春告げ鳥の別名をもつウグイスは、梅にうぐいすと言われるほどいい関係。花札の梅にうぐいすからか、いまでも梅の咲くえだに緑色の鳥が書かれたりもする。ただ、鶯色は梅にお茶会がいい関係のように、お茶色に近い。壁土いろを混ぜたようなくすんだ緑、和風オリーブ色と私たち仲間内では言ったりする。
だからイラストにあざやかな緑の鳥が描かれていたら、あぁこれは目白のメジロだなぁと。確かに家に飛んでくるメジロは、梅や桜の花の枝とまり花と遊ぶ。ウグイスはどちらかというと、少々地味なレンギョウの花の枝やロウバイの花の枝のほうがしっくりくるのだ。ただウグイスは気恥ずかしい性格で、あまり堂々と枝にとまらない。
塀代わりに植えられたりするレンギョウは梅と同じ季節に黄色い花をつける。バラ科の梅の仲間ではないが、蝋梅・ロウバイは蝋燭のような白っぽい黄色の花をつけ、梅のように咲いている。ふつうは、梅と一緒に咲いていたら、その名前からも梅の花だとみなおもう。
「これで梅干しできるん」「 できるよ、でもなってる梅の実はたべたらだめよ。お腹こわすからね。」
こうして子どもへ、文化と知恵の継承ができあがるんだぁ。梅の雨がふる季節、人の手がひと手間加わり梅干しになるが、未熟の梅の実は青酸を含み毒がある。
「チィーチィーって鳴いてるよ」
そうそれはメジロ。
高嶋ちさ子「パガニーニ: カプリス第24番」〜『12人のヴァイオリニスト』を聴きながら。@神戸須磨離宮公園
2014.3.2
折りつれば 袖こそにほへ 梅の花 ありとやここに うぐいすのなく /よみびとしらず
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