ボクには高校時代忘れられないことがある。それはボクがよく寝ていたこと。授業中にだ。しかしボクの隣に座っていたI君やN君はボクよりぐっすりと寝ていて、先生から注意をしっかりと受けてくれるのは彼らのほうだった。


　 日置先生のように直に注意をする先生もいれば、みてみぬ振りをしておきながらやおら「じゃぁ次の章を読んで」と寝てる生徒めがけて当てる先生もいる。「おぉ、お前どこから？」と質問されたボクは寝ぼけ眼で「ここからとちゃう」と教科書を指さす。（神戸弁のちゃうと言うのは「違う」と言う意味ではなく、接尾語みたいなぁここからが正しいとボクは思うけど、違うかもしれない日本古来の曖昧さを表現する「ちゃう」ちゃうかなぁ〜）


　 寝ていた彼は何事もなかったかのように、おもむろにいい声で朗読する。なんゃ、ちゃんと起きてるじゃんとおもうボク。彼の次に「で、これはなにを意味してるんだとおもう」とあてられるボク。「いやぁ、よぉわかりませんが、先生はボクたちを起こしてくれるために当ててくださったのだとおもいます」「ぼけ」


ボクたちにだってどうしようもない子どもの頃があり、隠したくもなる事件だってあったはずだ。だがいつのまにか、そんなことを忘れて、それより軽度のことを我が子が起こせば烈火のごとく爆発してしまうのだ。そして、ひとりになったときに、俺に似たんや、もうしわけない、と一人酒をのむ。


　 ボクは味覚がわからなくなってから、インドカレー屋さんのホットアンドホットの一番辛いカレーでも食べられるようになったんです、でないとカレー食べた気がせんからと高校時代の友に言うと「それあかんでぇ。味がわからんから激辛なもんばっかり食べるやろ、それ口でなくのどで味わうんやろ。そんなことしてたら病気に成るんやでぇ。ボクみたいに」と笑う。


「味を知りたいって気持ちわかります。私は糖尿病で味覚がなくなりました。でもねぇ、よけ悪くなりますよ。それに味は、もう身体に染み付いてますから、想像でわかります。あぁこのお酒はうまいなぁと。ボクがそうですから」とカウンターにいた紳士は笑った。Sonny Rollins「St. Thomas」を聴きながら。2013.7.19＠KOBEパブランボー