ファンは素敵だ。憧れの選手がエラーしようが「あぁ今日は調子悪いんだぁ、大丈夫か」と心配する。だけど結果がすべてのプロの世界だから、が今の風潮。「おまえはだめだ」と冷たい世間で結果しかみない。結果のためのプロセスカット、だからなにかにつけ、おもろないのかも。


　 スポーツ万能選手でもミスするのがあたり前。NBAプロバスケのMichael Jordan選手が大リーグに挑戦した時、『シカゴホワイトソックス・マイケル冗談』なんて見出しをみた。アメリカはもっと手厳しく彼を「恥だ」と罵ったという。 野球選手としての成績だけをみればたいした事がないのかもしれないが、極東の小国のいち野球ファンは「負けて恥をかいても、挑戦する凄さ。すごいなぁ。弱いけど甲子園めざす高校球児みたいや」と記憶している事実。


　ごひいきの選手の今までの事を知っているのがファン。成績や結果よりも、そこに至までのプロセスやドラマがあるから、大ファンなのだ。人間は過去の成績、ましてや試合結果なんてことを覚えているわけがない。後生大事にデータとやらの権威を表示することだけに熱心な人も居る。ファンはそんなものに基本的に興味は無い。


　 印象の強かったシーンだけが残る。そして同じ空気を吸えるこの現場に居られるのは一度きり。たまたまカープびいきのボクが梵英心選手と宇宙戦艦・大和（前田）選手の応援やぁとこの試合を選んだだけの野球観戦の日。なぜか、それはボクの伯父さんは戦艦大和の乗組員、その伯父さんが眠るのが梵選手のご実家のお寺さん。


　 ボクと息子にとっての記憶は、この夏の甲子園のようなアルプススタンドの応援と、そしてラジオから流れる後輩が実況中継する野球、その光景が描写される真実だ。


「なんやろあのゼロの看板。ぎょうさん在るで」赤い★の看板振ってる人みたいやなぁ。最近、こうした一人の選手をみなで応援するという光景に球場で遭遇したことはなかった。赤星選手の星の看板もって応援している人の輪に入って行って嬉しそうに星をさわってた幼い頃の息子をおもいだした。


　 震災以降手にしている携帯ラジオから「鹿児島からフェリーに乗って弾丸ツアーで駆けつけた、大和選手の地元鹿屋市ファンがゼロのボードと揺れています」と毎日放送の森本栄浩アナウンサーが伝える。彼は学生時代、阪急西宮球場で実況中継の練習してたよなぁ、とおもいだした。その過程を知っていて、実況中継のアナウンサーを応援している野球少年もここにいる。


「弾丸ツアーってなによ？」とナニワの名参謀・解説者の一枝修平さん。昨日の夜のフェリーで九州を発ち今朝到着して甲子園、そして今日の夜またフェリーで九州へ帰るツアーの事ですよ、と森本アナが説明。「たいへんやねぇ」。ふたりの掛け合いが面白くて、なんだか笑ってしまった。

「なに書いてあるの？」キバレ！大和って気張ってええとこみせよ！て。そんなことを子どもと言いながら。最終回、さよならのチャンス。その大和選手のところへ打順が。まるで高校野球の応援さながらアルプススタンドで揺れるゼロ。大和選手を応援するボード。

「すごいでマンガみたいやぁ」 そしてすごいことが起こった。ささきいさお「宇宙戦艦ヤマト」を聴きながら。ええ試合を魅せてもらいました、ありがとう。2013.6.29＠阪神甲子園球場