「大和はわるうぅないんです。兵隊同士が殺し合う、そんな力と力の戦でもって国と国との関係を維持していた時代が悪いんです。生き残った戦艦長門だって、ビキニ環礁 の原爆実験のために使われ、沈没させられた。勝った国がすきなように相手の国の物や人を使える、そんな時代は終わりにしたいです。」


　船乗りの親父は第二次世界大戦で二度も船を沈められた。二度目はなんと沈して救助してもらった赤十字船が砲撃を受けたのだ。先の戦争では、負傷した者を助ける船さえも攻撃対象にされたのだ、本当は敵味方関係なく人を助ける赤十字船であるから、襲撃するのは人の道に反するが、戦争は人をひとでなしにする。


　 親父の兄貴は戦艦大和の乗組員。そんな環境で育った身の上では、学校で教えられる社会の授業で第二次世界大戦はなんだか一方的に日本が悪く、戦争で戦う運命を背負った人が侵略者のように言われ、それを覚えろと言われる事に苦痛さえ覚えた。原因と結果 があるはずなのに、負けた方が一方的に悪だなんて、そんな事がこの世に存在するのか。中国のように植民地とされるのが嫌で自由を愛して戦った戦争のどこが悪いのか？　アヘン侵略戦争だってイギリスの中国への植民地戦争だ、全ての戦争や軍事介入を侵略戦争と言うのが学問的だともおもうがどうだろう。


「戦争や天皇陛下を悪く言う人はこの広島にも居ます。だけど『戦争を終わらせるために原爆を落とされたのだから仕方ないのだ』なんて事は口が裂けても言えません。そんな発言をする日本人は許せんのです、たまたま原爆が実験的に落とされたのが広島であって、東京であったかもしれない。私たち広島の人間は日本の捨て石ではないのですから。このおもいを解ってもらえるのは、沖縄、長崎、そして今では福島の人でしょう」


　 確かに天皇陛下が一番悪いなんてことを『はだしのゲン』では書いてあるから、それが気にくわない人も居るだろう。だから閲覧限定になったのかと勘ぐってしまう。しかし、当時の広島の状況下、むごい無差別 殺人現場と被爆の恐怖を知った子どもは感じたろう。この戦争を起こしたのは日本の一番えらい人、だから「天皇さんがわるいんじゃ」と言ってたわけだろうし。それが子どもの感覚だ。それを作者は素直に書いただけだろう。


　 今だってそうだが「原爆を落としたアメリカが悪い」なんて強く言わないのが日本人らしさだろう。また「責任は私にある」との天皇陛下のお言葉が、そんな日本の姿をあらわしてると。どこの国の民族も、しあわせをつかむために戦争をしていた時代があったのだ。そして戦争から数十年経てしあわせはつかめなかった、と解った、たとえ戦勝国でさえ、それが21世紀なのだ。


　 戦艦大和を早く建造するための、作業の高効率化を目指し採用されたブロック工法は日本工業の礎とさえ言われている。そして私たちの今の生活を豊かにしてくれている数々の技術が、ここから生まれている。資源がなにも無い国といわれたアジアの片隅で、資源輸入の道さえ閉ざされた時、なんとか人智と技量 で解決しなければというミッションだけで、この国を助けた人たちの夢のひとつを大和ミュージアムでみせていただいた。


　 戦いにつかわれたから悪く言う人がいる技術、しかし時の運の勝ち負けだけをみていると、その後をみ間違えてしまう。戦艦大和がいま呉港に停泊していたら、艦首波動砲やもっと素晴らしい技術が生まれたかもしれないとおもいながら。佐村河内守 「交響曲第3番 Hiroshima」を聴きながら。2013.8.30記。

　 写真は合成です。沖田十三艦長の衣装は呉にある松本零士さんの記念館・ヤマトギャラリー零ZEROでお借りしたものです。 松本零士さんがお召しになってたものですから子どもには大きいです。