「コウノトリの赤ちゃんが生まれた」兵庫県豊岡市で3月27日に二羽の誕生が確認された。その日、私たち河童親子でそのコウノトリの住む湿原を荒らす外来種駆除に参加していた。胸まである長靴に身をつつみ、子どもは沼にはいりおお喜び。はたから見れば水あそびのようであるが、ちゃんと子どもは学んでいた。
「コウノトリはむかしおったん?」
「むかしむかしはたくさん居たんだろうけど、科学農薬を使うようになってドジョウやカエルが田んぼにおらんようになって、コウノトリもおらんようになったんやでぇ」
「なんで海外からきた魚を駆除すんの?それもコウノトリの餌になるんちゃうん」
「コウノトリの餌を全部食べてそいつだけになるからあかんのやでぇ。自然のなかでのバランスがくるうからなぁ。お前も毎日おんなじ魚ばっかり食べられへんやろ」
「そやなぁ」
「いろんな種類がおるから、自然ってバランスとれとるんや。これが生物の多様性が大事やゆう事やね」
豊岡市さんが主催し、新日本石油さんが協賛した『ENEOSわくわく生き物学校』という集いだ。コウノトリ野生復帰に取り組む豊岡市で、生物の多様性や外来種に対する知識を子どもたちに正しく伝えようという催し。環境保全活動のまなびにはもってこいの題材。子どもは喜んで参加していた。コウノトリ、そして子どもたちのための環境保全なのだから。こうのとりの郷公園でコウノトリを観察したあと、2002年に飛来した渡来コウノトリ「ハチゴロウ」が居ついたハチゴロウの戸島湿原で外来駆除活動について、コウノトリ湿地ネットの三橋弘宗さんのお話をきき駆除作業をお手伝いしたのだ。三橋さんのお話がおもしろくて、よくわかる。
「くじびきがおもしろかったなぁ。アタリがちゃんと入ってても当たらへんねんなぁ」外来種が増えるとどれくらい困るの?と題した講師の三橋弘宗さんのワークショップは、ほんとよく解るあそびだった。1匹2匹種の保存ができたからって、それで次の代につながるかというと、そうは問屋がおろさない。「そのことがなんであかんのか?」が理解できれば子どもだって「じゃぁ、こうしよう」と考える。そうなることはわかっていましたけれど、とよく聞かれる逃げ口上だけれど、それじゃぁだめだ。ちいさなことからコツコツとやっていくしかないのだ。それでいいのだ。「いきものって、ひとりだけ生き残ってもしかたないんやなぁ」
うらやましくおもったのは、豊岡の人は「コウノトリ」でつながっているということ。コウノトリが飛ぶ姿を観れば「翼をください、あぁ空がとべたらなぁ」と雄大な気持ちになり。ヒナがかえれば「無事巣立ちをしてほしい」と願い、「命が宝」とそれが地域の話題となる。これがええ。おんなじ兵庫県に住んでいてもこれだけ地域の差を感じた、みんながええ町やおもえる、誇りにおもえる町に住みたい。そう子どもも感じられる町を大人はつくらんといかんのやねぇ。
「おかえり、コウノトリ。今度はみんなで暮らすから」。すてきな言の葉が豊岡には掲げられていた。
2010年3月27日 1197
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