「ここ父ちゃんが住んでたところの近くやんなぁ。公園できるでぇ」そう言って息子がもってきたのが『ドングリネット新聞』。
「あぁ、貨物鉄道の神戸港駅のところなぁ。あそこ公園になるのかぁ」
鉄道マニアの子どものもうひとつの楽しみが、どんぐり集め。なんとどんぐりを集めて貯金することをしている。ちゃんと通
帳まである。市民参加の緑化運動組織が「ドングリネット神戸」でドングリを拾って預けたり、苗木を育てたりして、新しい街の緑づくりに参加できるシステムを震災の1995年からつくっている。ボランティア元年といわれた1995年、震災の年。あれから市民活動は根づき、そして社会を一歩一歩良くしている。
どんぐりの樹を植え育てようというのが、この「ドングリネット神戸」●のおもいだ。震災復興記念公園・みなとのもり公園にも、育てたドングリの苗を植えている。そのドングリの苗樹に肥料をあげに行こうと息子は言うので公園オープンの1月17日、震災の日に参加した。
風車のような震災メッセージの黄色い花がきれいだ。「天災はわすれた頃にやってくる。二度とこないように。11歳」「震災が起こっても家族といっしょにいたい。12歳」「あの日をわすれません。いつまでも心の中で生きています。58歳」「ボクは阪神淡路大震災のとき生まれていなかったけれど、もしそういう地震が起きるとはわからないけれど、もし起きるのならいち日いち日を大切にすごしたいです。7歳」と阪神淡路大震災へのおもいがつづられている。
貨物列車の操車場だったのでだだっぴろい。全壊だった我マンションにも夜、ガシャンという連結音が聞えたりしていた。あの音と船の汽笛は眠りのなかの、おもいでとともにある。
そこが大きな公園になり、震災の日に開園。そして何年か経てそれこそ樹木が大きくなる。そうなるといい公園になるんだろうなぁ、いやそうしていかなくちゃいけないんだと。写
真の奥がまだちいさいが樹がたくさん植樹されている。
「どんぐりのはっぱ枯れてるなぁ」と子どもが言うと「どんぐりの樹は冬は枯れてるようにみえるだけで元気なんですよ」と教えられた。「春のために、おいしい肥料をあげよう」と。
樹を植えに新潟からやってきた方もいる。井上和子さんは神戸のひとたちにと「実のなる樹サクランボとアジサイ持って来た」と、ちいさなスコップで一所懸命に植えようとしている。私が心理学実験実習で大学時代お世話になった先生と同姓同名なので、なんだか親近感わいてお手伝いした。「ショベルもってこい」と息子と一緒に穴を掘り、ちいさな苗木を植える。そして「元気に育てよ」と肥料と水やり。
「またこの公園に来る楽しみができたなぁ。どんぐりとさくらんぼの樹がどんだけ大きくなっているか」いままでとはちがった震災の日だった。2010年1月17日「震災の日」記
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