「須磨すい、新しなって行ってないから行こ」
「どこが新しなったん?」
「ペンギン館とかアザラシ館とかできたんやって」
「ほないこか」と。
須磨海浜水族園が正式名称ではあるが、神戸の小学生は『すますい』と言う。水族園のマンガ広告が「すますい」と言っているからか。いまの子どもはすますいでさかな観て、須磨浜で貝がらひろいして、須磨サイダー飲んで、あぁ日本のコートダジュールと。私たち親子はこれにプラス温泉がつく。
子どもの頃、元町から須磨に行くと空気がちがうのが不思議だった。長田までは列車から観る風景は街なのだが、鷹取すぎると急に避暑地のようなおもむきに変わる。空気がちがうのだ。地形も海岸避暑地にぴったりの鉢伏山がおのころ島・淡路島にむかって伸びている。そして向こうは山に隠れてみえない。今は明石海峡大橋が、海岸避暑地のおもむきをひきたててくれる。
こんな観光地ぽいところに、最近は観光のお客さんが少ないのは不思議だ。須磨すいを基点にして、須磨の浜を鉢伏の須磨浦公園をめざして散歩。そのあとロープウェーで山に登るのもよし、そのむこうジェームス山の別
荘地あたりを観ながら垂水まで足をのばすのもよし。垂水の浜にはアウトレットや温泉もある。私たち親子のお気に入りサイクリングコースでもある。
新しくなった、ということで展示も変わりつつあった。ある国の人から観たら虐待というイルカショー、でもイルカは楽しそうだけれど。なんでもいちゃもんつけようとおもえば、どうにでもなるなぁとおもいながらイルカの訓練を観ていた。なんでも悪く言って批判することでお金もうけするやからがいるんだねぇ。隠し撮りした映像で商売するエセ自然保護映画なんてのもあるしね。人間の人権のほうが大切だろうが、とだれか言う人はおれへんの。
20年前はクリオネは流氷とともにニュースになる存在でしかなかった。数センチのミジンコみたいなものが泳ぐ姿が、波に揺られてふらふらするところが愛らしく、そこがかわいいと「流氷の天使」というネーミングまでいただいて人気者になった。北海道網走紋別
のオホーツク海沿岸の町おこしにも一役かった。そして冬の季節になるとここ神戸の『須磨すい』でも展示されるように。北の国の使者、流氷のしたに住む、たしかにいやされる存在。
「流氷ってどこからくるん。氷で海がなくなるん、それなら歩いてロシアに行ける?」「大きくなったらとうちゃんみたいに、クリオネと流氷を観るために紋別
まで行ってみろ。ガリガリ君を食べながらガリンコ号に乗るんやねぇ、おもろいでぇ。それが旅ってもんだ」子どもが流氷というものを知り、この目で観てみたいとおもわせる生物クリオネ。好奇心が刺激される場所へいく、それは疑似体験ではだめだよなぁとおもう日でもあった。
2010年3月15日記1059
|