「あれぇ、アニキ元気かい？　懐かしいねぇ、また遭えたねぇ。嬉しいよぉ」寅さんこそ、お元気そうでなにより。「きょうは子どもさんは居ないのかい」この春高校受験で、今更ながらに家で勉強しています。 「そぉかい、会いたかったなぁ。あの子も大きくなったのかい。えらいねぇ」いやぁ勝手に大きく成っちまったんですが。


「そうかい。そしたらよぉ、帝釈天さんは勉強の神さんだから、おいらが代わりにお願いしとくよ。息子さんが希望の学校へ行けますようにと。これで合格まちがいなしだ」そんな嬉しい言葉をかけてくれる。ほんとに寅さんは、あったかい。 　


　寅さんのものまねで山田洋次監督公認の「元祖寅さんガイド」の野口よういちさんとお会いしたのは5年前の1月17日。今は寅次郎を襲名されている。


「いやぁ、名前が重たいよぉ。寅さんにほんとに成っちゃったんだもの。寅さん、最後の映画の舞台がここ震災の日の長田、寅さんとして見守りたいなんて偉そうなことは言えないけれど。でも何かしたい。だからボランティアのお手伝いをと。もう20年にもなるんだねぇ。長いようで短いね、人生は」。 　


　 1.17になると、気が滅入る。なんで神戸にまだ居るんだろうと。結局どこにも行くとこがないんだよねぇ。震災の時の場所に戻れるわけでもないのにさぁ。寅さんのように、疲れたらまた葛飾柴又の寅屋に帰って来る、みたいな。そんなとき、こうしてあったかい人に出逢えるから、生きてて楽しいのだ。


「なんていうのかなぁ、そうだ。あー生まれてきてよかったと思うことが生きてりゃなんべんかあるだろう。そのために人間生きてるんじゃぁないのかい。子どもさんが入学式を迎えた時がそのときだね」
　 渥美清「泣いてたまるか」を聴きながら。2015.1.17＠神戸JR新長田駅構内、寅地蔵