「その自転車の事すべてわかったと頭でおもって、サイクリングに行きたいとおもうやろか？　知らないことがあるから、だから余計に好きになるんとちゃう。あぁ、このディレーラー擦れる音が気にならんわぁ、とか。値段高いのに、なんだかレバーの感触が悪いとか。それは買って使って、はじめてわかるもんやもんなぁ」。


　インターネットが全て正しくて、実際手にとっていないのに、その製品がええとか悪いとかいうのが流行ってる。おかしいよなぁ、あの人にとって悪い欠点でも自分にとってはええ事かもしれんのに。インターネットがパンクしたタイヤを治せない。そしてプロが治すのと素人がなおすのとはわけが違う。素人がプロらしく語り、それが蔓延しておかしな事になっている。


「原子力専門家と同じちゃう、ふつうの人からみたら素人みたいな考え方のプロだね」


　自転車を買ってもいないのに、あぁサイクリングっておもしろい、それがNOW風の感覚。


　 好きなモノを買うって、中学生の頃の恋と似てますね。その存在だけで自分は幸せになれる。なんかわからんけど、彼女の事が気になると。その時は彼女の事なんてなんにも知らないのにね。自分が好きになったんやから、彼女が鼻をほじっているのを見ても、あぁあの子のハナクソはすばらしい、と観念する。おっちゃんの中学時代はどうやったん？　とみせていただいた学級写 真。いまでは「学校写真」とも言わなくなった。卒業アルバムもなく、先生が撮ったクラス写 真が多くなってきた今。


　 セピアに変色した学級写真。経年変化で薄れてきている。「これ君の技術で修正できる？」できますよ、ちゃんとプロの写 真屋さんが撮った写真ですからペーパーに残ってますから。レンズのゆがみも輪郭もはっきりさせて修正して元に戻せるとおもいます、と返事した。いい感じの写 真だった。中学生の制服だけど、よくみるとみなすこし違ったりする。


「貧乏な時代だからね、制服も一応あるけど、みんなが買えるわけでもない。それでどうのという時代でもない」でもみんなイキイキしてますよ。


「闇米はいっさい食べない、と栄養失調で死んだ裁判官の息子が居てね、彼は大志を抱き裁判官になった。必ず規則を守る子で、彼こそ裁判官になるべくし生まれたと同窓会では言われてる。いまでこそ裁判官は偉い人だけど、むかしはそうでもなかった。どんな人でも食べる事で精一杯の時代だったんだよ。」


　 ほんとうはその道の専門家が居る。だけどそのプロが自分たちだけの都合の良いように専門知識を利用して人や国を不幸にしてまでも自分が儲かるようしていた悪がある。それは人の道に反した専門家であり、本来の専門家は人が幸せになれる技術なり知識をもっている。そしてそれをできるだけ多くの人に使ってもらい、すこしでも幸せな暮らしが出来るように、とふつうにおもっている。日本の社会は棄てたものではないはずだ。2011.10.25＠KOBE　　RCサクセション「ぼくの自転車のうしろに乗りなよ」を聴きながら。