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悲観的に夢見ながら
廃虚の上に坐っている ハイネ |
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夙川は散歩みちとしては最高の桜並木 |
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「サクラ」と呼ぶさくらの花は正確には存在しない。どういうことか、それは「ヤマザクラ」の花であったり「ヒガンザクラ」の花であったり「ソメイヨシノ」の花であったりするからだ。「サクラ」と言う品種の桜はこの世に存在しないのだ。このこともあまり知られていないことのひとつだと思う。どうして日本国中桜の花が咲くのか。それは桜が何百年ものあいだ雑種を繰り返してきたからだ。網走など夏でもすずしいい、かたや沖縄では冬でも夏の網走くらい暖かい、そんな地域に広く分布する桜たちはすごい生命力だ。樹齢千年をゆうに超える桜の樹木も存在し、今でも花を咲かせ、2000年の暑い夏も緑みどりした葉を枝いっぱいに広げていた。考えてみれば樹齢千年以上、9世紀からもうすぐ21世紀まで生き続けているのだ。奈良平安時代から咲き続ける桜があるのだ。その昔ハイネは滅びゆく古典的イタリア人をみて「悲観的に夢見ながら廃虚の上に坐っている」と言った。純粋であるがゆえに滅びゆく文化を感じての言葉だという。純粋な幼児は不純な大人よりも弱い。純粋で有れば有るほどもろく壊れやすいと言い、雑種と呼ばれる混血は強いと言う。 混血文化というが日本民族はその代表みたいなものだ。飛鳥白鳳天平時代は帰化人によるその混血文化が進んだ時代だとも言われる。同じように桜という存在も混血により、多種多様の発達をとげ現在私たちの目を楽しませてくれているのだ。その中には大平桜のように自然交配によってその木だけが突然変化したような桜もあれば、同じ寒緋桜でも石垣、沖縄地域でも色や咲き方が微妙に違う桜もある。ヒガンザクラでもよく観ると、微妙に違っていたりする。それは単なる個体差なのか、それとも多種との交配による変化なのか、それはわからないが。しかしいまでは遺伝子解明が進められているので、桜の種の変化もわかるのかもしれない。ただ同じ品種だけで交配した桜はだんだんと花の付きも悪くなり、寿命も短いと言われている。そのため太閤さんのお花見で有名な京都醍醐寺の枝垂れ桜などは、現在最新のクローン技術により種の保存をしていると言う。しかし一方では純粋なもののもろさゆえに、美が生まれると言う人もいる。「病める貝殻のみ真珠は生まれる」と言った人もいた。しかし私は、これはその世代が最期なゆえに美しいと感じてしまう人間の感じかたなのだと思う。 特に私たち日本人は人の夢と書いて「はかない・儚い」と呼ぶように、その状態が最高の状態ではないことは解っていても、儚い夢を観ているがごとく最高の桜を魅せてもらったと言う。すぐに散ってしまう桜の花にまで、若くして死んだ友人のことや自分の人生とオーバーラップさせたり出来る。ここ夙川はそんなこんなを考えながら大学生時代よく散歩した、マイ哲学の道なのだ。受験の時に歩いた大堰川・桂川沿いのことを思い出しながら。 ここ夙川(しゅくがわ)は 桜の中を散歩するにはもってこいの、すてきな散策道だと思う。約2300本のソメイヨシノ、オオシマザクラ、里桜が植えられている。川面 に迫りだすように伸びた枝から花を咲かせるさまは圧巻。そこそこソメイヨシノとしては大木の木が多い。また春だけでなく夙川沿いにはクチナシやアジサイの花も植えられておりみどり豊かで夏まで散歩は楽しめる。夏の散歩には香櫨園浜で海を楽しむのもおすすめする。 *このページの製作年は1996年、データ内容は当時のものです* |
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撮影は2000年4月6日 場所 兵庫県西宮市夙川公園 交通 桜の花見なら阪急甲陽線苦楽園口駅下車 すぐの夙川を下流にさがる阪神本線香櫨園駅まで約3.8キロ クルマは駐車場がないので駄目 問い合わせ先 西宮市公園緑地課0798-35-3613 |
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