糸桜 かすみの紅に 風そよぐ

折れていなければどんなに大きな枝垂れ桜だったことだろう

 枝垂れ桜はそうじて開花が早い。しかし個体差や環境もあるから一概には言えない。ゆえに満開に出会えれば幸運なのだ。またソメイヨシノの桜前線などはアテにならない。アテにならない「アテ」とは木の用語で地中から目を出し太陽によって根に近い部分が傾斜地などは特にひん曲がってたりするのをご存知だと思う。この曲がったりしている部分がアテと呼ばれる部分で、木材として使う場合この部分「アテ」は使い物にならないので「アテにならん」となった。枝垂れ桜だと木を買ったけれど、枝垂れ桜にはならなかった、なんて話しを聞いたこともあるが、自然のものはそれだから目利きが大切なのだとも感じるし、自然の摂理に逆らった方法はまずいのだと思う。当り前のことなのに、このことを忘れてしまっている。

  だってスーパーでトマトひとパック買う。中には美味いものをあれば、なにこれなんてのもあるかもしれない。同じところで栽培していても苗が違えば味も違ったりする。私は美味いスイカと八百屋さんにいわれて買ったがアテはずれだった経験数知れず。いまでは店先に並ぶ切ったスイカの状態をある基準で自分で判断すると、これがまずまずハズレなし。みんなおんなじでないといけないと教えられた私たち、悪しき平等主義のおかげで、なんでも違ってあたり前という感覚がにぶっている。枝垂れ桜も花の色の淡い一重のシダレザクラから濃い色のもの、そして特に紅色の強いベニシダレ、さらに八重咲きのヤエベニシダレまである。一重の花の色の淡いくちいさなものをイトザクラと呼んでいたりもするが、イトザクラと呼んでいて色の濃いもの、山梨の神田の大イトザクラなんかもあるからこうした呼び名もアテにならない。



  同じようにエドヒガン、アズマヒガン、ウバヒガン、タチヒガンは別名で「エドヒガン」のこと。ソメイヨシノもこのエドヒガンの仲間でエドヒガンとオオシマザクラの愛しあったカタチといわれる。エドヒガンの桜は突然変異が多いらしく、この枝垂れ桜もエドヒガンの仲間。枝の成長速度が早いために枝垂れると言われている。枝が違う以外はエドヒガンとシダレザクラはなんら変わらないと言う。枝垂れ桜はその優美な姿から園芸品種として今ではたいへんな人気で人家の庭さきや寺の庭などでよく見かける。しかし、もともとはどこかに自生していたエドヒガンが、突然変異で枝がヤナギのように垂れてきて、花を付けると素晴らしい趣だったので、その子どもが園芸品種として京都の都で珍重されたのだろうと私は思う。この枝垂れ桜は樹齢150年といわれ、内子町の山深い里にひっそりと咲く。東西15メートルの枝を張るが、台風で何度か傷つき、雷に打たれて高さが半分になったという。幹はほとんど空洞化しているが、地元の人たちの暖かい努力で樹勢を戻し今でも美しい姿をみせる。四国は台風の通 り道なために桜の大木も枝をやられているものが多い。しかし四国の人たちは桜好きが多いのか、折れた桜を大切に守っている、そんな姿がこんな木を一本みてもうかがい知ることができる。

*このページの製作年は1999年、データ内容は当時のものです*

 

 


撮影は1999年4月1日
場所
愛媛県喜多郡内子町石畳
 交通JR予讃線内子駅から石畳行きバス約30分終点下車とほ30分
 問い合わせ先
内子町町並み保存対策課0893-44-2111

 

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