あすもこん しだり桜の 枝ほそみ
柳のいとに むすほほれけり

兵庫大河内町の祐泉寺八重紅枝垂れ桜

 桜とひと言でいつても、その一本一本が人と同じように違う。ソメイヨシノしか、桜の品種を知らなかった方は、このホームページをご覧になって驚かれたかもしれない。同じように見えてもよく解らない、と言う桜もある。岐阜の中将姫誓願桜島根の大平桜はそこだけにしか咲かないめずらしい品種だ。また、桜は春と思われがちだが、秋や冬にも咲く不断桜もある。三重の白子不断桜などがそうだ。また、同じ品種でも個体差がある。私の親父の庭の枝垂れ桜は3月下旬には咲き3月末には散っていく。枝垂れ桜はこのように、3月下旬に咲きはじめ3月末近くには満開になるものが多い。身延山の久遠寺にあるたくさんの枝垂れ桜がその代表だ。

  しかし、同じ枝垂れ桜でも花の色が濃い紅枝垂れと呼ばれる品種は、そうじて花期が遅いのが特長だ。この祐泉寺枝垂れ桜が八重紅枝垂れ桜だ。仙台市で多く植えられたそうで、植えた市長の名をとって遠藤桜とも呼ばれている。ここの桜は長くしだれた枝が優雅で、それに八重咲きの濃い紅色の花を付けるものだから、なお一層引き立つ。枝垂れ桜はエドヒガン桜の変異したものだが、どうして枝が垂れ下がるのかだが、枝全体の成長速度が他の桜より早くて、若くして枝が大きくなるものだから自分の重さや葉や花の重さにたえきれず垂れ下がり、そのあとそのカタチが固定されていくのだそうだ。枝垂れ桜と呼ぶものには、エドヒガンがそのまま枝を垂れたカタチの薄い桜色の花を付ける糸桜、花の色が濃い品種の紅枝垂れ桜、そしてその花が八重咲きの八重紅枝垂れ桜などがある。

 ここ祐泉寺の枝垂れは八重紅枝垂れ桜だ。お寺さんの石垣を越えて枝垂れるその姿は素晴らしいものがあり、関西、岡山の近隣県から見に来る人も多い。樹齢はおよそ100年ちかく、近年桜の勢いがなくなり、数年前に樹勢回復の処置を施したそうだ。そのおかげで1999年の春は満開だった。

  大河内町は秋の大ススキの原で非常に有名だ。その砥峰高原に登る入り口にあるお寺さんでもある。この周辺のひとは、春にはこの紅八重枝垂れ桜、夏ははなしょうぶ、秋はススキと素晴らしいものがたくさんご覧になれる、うらやましい限りだ。


*このページの製作年は1999年、データ内容は当時のものです*
撮影は1999年4月9日
場所
兵庫県神崎郡大河内町
交通
JR播但線長谷駅下車、とほ約15分
問い合わせ先
祐泉寺0790-35-0347
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