いにしへの 奈良の都の やえざくら
けふここのへに にほひぬるかな

岐阜市願成寺の中将姫誓願桜

 自然界には不思議なことは数多くある。日本でそこにしか生息しない一品種、たった1本の桜がある。この中将姫誓願桜もその一本だ。花びらは細長く1個の花に30枚もの花びらが付く。それも千二百年もの間風雪に耐えてきた桜なのだ。巨木とはその姿からは言いがたい、女性的な雅びやかな木なのだ。ヤマザクラの一品種らしいが、この桜の根にヤマザクラをついでも根が付かないそうだ。そのため日本でここだけの貴重な桜なのだ。その姿は優美な感じで、この桜の伝説に由来するのか女性的な雰囲気の桜なのだ。この桜のほかに、大平桜が日本でそこにしか生息しない一品種としては有名。また私の出身の兵庫県にはヤマザクラとキンキマメザクラの自然交配種の正福寺桜という兵庫県固有品種の桜があるが、この中将姫誓願桜に姿形が似ている。

  奈良県北葛城郡當麻町(きたかつらぎぐんたいまちょう)に當麻寺と言う蓮糸で出来た「曼荼羅図」で有名なお寺がある。その曼荼羅図を織り上げたのがこの中将姫だ。當麻寺を後にした中将姫は岐阜県の願成寺にやって来て、女性の災難除けに成ればと都から持ってきた桜をこの地に植えたと寺伝にはある。その桜がこの日本で願成寺にしか成育しない「中将姫誓願桜」なのだ。ここの桜は付近の人からたいへん大切にされているらしく、いつも花の季節にはたくさん人が集う。車イスで来ていたおばあちゃんによれば、この桜は本当に良く病気に効くのだという。だから、私はこんなに長生きなのだと話してくれた。確かにこの桜自体がお守りの様に思われているらしい。おさい銭箱も桜にある。

  自然界には突然変異などと言葉では説明されるが不思議なことが数多くある。その変異からとんでもない事実や人に役立つ事が起こりえるかもしれないから興味津々だ。人間は万能ではないけれど、謎を解き明かそうとする行動だけは忘れたくない。そして自然界のこうした贈り物を大切に見守って行きたい。樹高約9メートル、推定樹齢1200年あまり。

*このページの製作年は1996年、データ内容は当時のものです*
写真は1996年4月18日撮影
品種は「ヤマザクラ」の突然変異種
花の色は薄紅色で美しい八重咲き、花弁のかたちが細長い
樹高は8メートル、3本に根元から分かれている
1929(昭和4)年に国の天然記念物に指定

場所 
岐阜県岐阜市大洞1丁目
交通 
新岐阜駅から大洞団地行きバス
30分光輪公園下車とほ5分
問い合わせ先 
願成寺058-243-2154
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