老花の ほこりに満ちし 桜かな  

但馬の吉野と賞される立雲峡の桜

 但馬の吉野と呼ばれる立雲(りつうん)峡は山桜の名所だ。しかしここのおもしろいのは遠望してみることを良しとするところだ。桜にはその木の下で酒を酌み交わしてめでる桜から、こうして遠くから見ると素晴らしいと言われるものまで、数多くの楽しみ方がある。そのことだけでも、いかに我々の祖先は自然を大切にしてきたことか、そしてその中でも桜の花を楽しみにしていたことかがうかがい知れる。

  山城遺跡として全国でもまれな完存する遺構である竹田城址は観るべきものが多い。山城と言えば沖縄に残る今帰仁グスクも石垣の遺構が完全に残る素晴らしいものだ。今帰仁グスクには日本で最も早い寒緋桜と桃の花が咲く。この竹田城の天守台は標高353.7メートルの山頂に築かれている。竹田城は、嘉吉年間(1441〜43)、但馬の守護大名、山名宗全が出石城の出城として播磨・丹波から但馬への侵略路に位 置するこの地に、13か年を費やして築いたと伝えられている。現存の遺構は、1577(天正5)年の豊臣秀吉の但馬攻めの後、近世の城郭に普請するように命じたものとみられていて、別 名を“虎臥城”とも呼ばれ、国の史跡にも指定されている。その山城から遠見の桜として眺められていたのがここ立雲峡の山桜だ。

  写真は逆に立雲峡から竹田城址を眺めたものだが、よくもまぁあんなところに城を築いたものだと思う。標高756メートルの朝来(あさご)山の中腹にある立雲峡は、点在する無数の奇岩・巨岩のなかを樹齢300年以上の山桜とソメイヨシノが咲き誇る。山間部を縫うように朝来山のふもとには円山川が沿って流れ、晩秋には円山川特有の川霧が出て幻想的でもあるこの地。山桜の間には中国山地特有のこぶしが点在するのもおもしろい。桜の山の中に入り込み遠く山城を見ていると下界の喧騒もわすれ、一瞬自分が山城の時代にタイムスリップしたような不思議な気持ちになる。

  また和田山町には国の天然記念物の大木「大カツラ」がある。主幹は朽ち果てしまい残念ですが、周囲から約80本の“ひこばえ”が亡き主幹を守るかのような形で林立、主幹の跡は6畳間くらいの広さがあり大きなもの。

*このページの製作年は1996年、データ内容は当時のものです*
遠く山城・竹田城を臨む

 

 


撮影は1994年4月20日
場所
兵庫県朝来郡和田山町竹田
交通
JR播但線竹田駅からタクシー10分、
クルマ中国自動車道福崎IC〜播但連絡道和田山IC下車すぐ
大阪市から約2時間、神戸市から約1時間30分
京都市から亀岡経由で国道9号利用 約2時間30分 
問い合わせ先
0796-72-3301和田山町観光協会

 

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