日女道丘(ひめじおか)に咲く桜はどこか悲しい
天国でしか結ばれなかった恋のにほひがするからか

お花見のシーズンはのどかな世界遺産姫路城の桜

 なぜこんなにも桜のお花見が私たちこころをとらえるのか。「桜の花が咲くことがそんなにも日本人にとって嬉しい出来事なのか」と桜の花が美しい姫路城をわたしが案内したときイランの映画監督アッバス・キアロスタミ氏の息子に尋ねられたことがある。桜の花が咲くと日本人の主食であるお米を作るサインだから、といったいい加減な説明をした様に思う。このことは私が勝手にそう思ってる事に近いのだが、なまじ違うとも言い難い。

 農耕のはじめの季節春を表す一番のサインは桜の花だ。そして、この桜のさは「田んぼ」を意味し、くらは「神座」を意味すると民族学では言われている。桜がそんな田の神さまだとすれば、その花が咲くことはすごいことで、それによってその年1年の田や畑の収穫が占われたりしたのだろう。確かに地方によっては、農家のおっちゃんに「今年はよく花もつけて、一気に満開じゃ。今年はよく作物も実よ」と言われたこともある。そのおっちゃんの観測ではこの桜がこんな咲き方をする時は、気候もそんなに急変はなく、おおむね順調な作物にとっていい年になると言う今までの経験からくる言葉なのだろう。 確かに桜は年によって咲き方が全く違ったりする。つぼみを付けたときに気温が思うように上がらないと、そのうち鳥がやって来てパクパクとつぼみをついばんだりする。それに冷たい雨でも降ろうものなら、くさってつぼみがだめになったりする。1997年の岡山落合の吉念寺の醍醐桜や1993年の高知大藪のヒガン桜などは、淋しいかぎりの花だった。桜の蕾は美味しいのだ。鳥のウソなどは大好物なのだ。天候の変化で蕾のままの状態が長いとパクパク食べられてしまう。1本の枝に花がたくさん付き豪華なソメイヨシノですら、年によって実は花の数が違う。ソメイヨシノが里桜の様にボンボリの様に見えるときは花が付きすぎた年だ。この桜のホームページにはソメイヨシノの紹介があまり無い。何故?と言う質問も受けるのだが、ソメイヨシノを見に行かないわけでは無い。私にとっての日本一のソメイヨシノの桜もあるし、ここは周りの景観と相まって凄いと唸るような場所もある。それが、ここ姫路城のソメイヨシノだ。

  言うまでもなく世界遺産という世界の宝でありながら、そのなかで春になると飲めや唄えの大騒ぎ、この光景を観るだけでもすごい。播州にもうまいお酒が多く、ゆえにお酒飲みの人も多い。夜桜見物の時期には、姫路城をライトアップするランプの色も変わるし、人の頬もほんのり赤くなる。お城の中、城内には動物園、図書館、美術館の施設もある。こんなのどかな世界遺産はあるのだろうか。私はバカなお役人さまが大切な世界の大切な宝なのだからと「桜の花見お酒禁止令」でも出さないかと不安ではあるのだが。世界遺産と言ったって、そこでは生活する人がいて、そこの土地特有の暖かさがある。もし、他の国の世界遺産を旅されるのなら、まず姫路城を感じてから行けば、例えば規模などにしても比較ができいいと思う。よく東京ドームの何倍なんて表現をマスコミでは使うが、はたしてそれで大きさをイメージできる人は一体何人居るというのだろうか。だから自分の大きさの基準を持てば旅もなお一層楽しくなる。姫路城とドイツヴァルトブルク城とはどれほど大きさが違うのか、仁徳天皇陵の古墳とピラミッドとは大きさはどれくらい違うのか、それを自分の目で見て両方実体験として知っていることこそが豊かさだと私は思うのだけれど。

*このページの製作年は1997年、データ内容は当時のものです*

 築城400年、1993年城郭建築の傑作として世界遺産に指定。白漆喰で塗り固められた外観から白鷺城とも呼ばれる。ソメイヨシノ桜だけでなく西之丸庭園の枝垂れ桜、山桜、オオシマ桜など約1000本もの桜が各所に咲く。夏の浴衣祭りも盛大なお祭りで必見だ。姫路は女性の物語が多い、数奇な運命をたどった徳川家康の孫娘千姫、「番長皿屋敷」で知られている井戸から化けてでたお菊さん、米問屋但馬屋の娘お夏さん。ゆかりの地も多い。
 

撮影は2000年4月7日
場所
兵庫県姫路市本町
交通
JR山陽本線姫路駅下車、
とほ北へ約15分。
クルマ第2神明道路・ルート2中地ランプ北へ4キロ。
問い合わせ先
姫路観光協会0792-21-2512

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