桜色に衣はふあき染めてきむ
       花の散りなむのちのかたみに   古今集

京都大原の実光院不断桜

 秋の大原はその紅葉の美しさに訪れる人が多い。その大原を代表するのが三千院だ。桜花の春も美しいのだが、何と言ってもここは秋だ。その三千院にほど近い場所に実光院がある。あまり知られていないがここには秋咲く桜、不断桜がある。私は秋の三千院を楽しんだ後、人の流れとは逆行してこの実光院でひとやすみさせていただく。おうすをいただき、庭に降りる。とそこには桜の花びらが散っているのだ。桜好きの私にはもうたまらない世界なのである。

  秋に桜に会えるとは、そんな思いで庭を散歩させていただく。あまり京都の庭らしくないところがいい。肩ひじ張らずその辺りで佇んでいたも、なんの気兼ねもない、それが私は好きなのだ。人には相性というものがあるが、庭にだってある。石庭がいい人もあれば、豪華回遊式庭園がいい人もいるだろう。自分の好みが若いうちはなかなか見つからない、と言うより解らない。京都には学生時代からよくお寺や神社を散歩したが、どこがいいかなんて解らなかった。しかし歳を取れば、何となく、こんな場所がいいな、と言うのがおぼろげながら見えてくると。そんな場所を早くみつけて、年に一度でも訪れてみると、ますます好きになったり、もしくは嫌いになったり。そんな場所が京都で見つけられれば、なんとステキなことだろうか。


  神戸から京都は、時間にして1時間とすこしの距離。しかし、それ以上に旅をした感覚がある。京都に住んでいる友達は「おまえ、いつからそんなに風流になったのだ」と言われるが、京都に行くととたんに風流になるのだ。仕事で京都に訪れると、待ち時間のあいだお寺でボーッとしてそのまま仕事したくなくなる時がサラリーマン時代よくあった。京都で働く人はそんなことにならないのだろうか。私なら年中何か理由を付けて、その辺でぼーっとしているだろう。春になれば、桜の花が気にかかり、加茂川べりのカップルに触発され自分も今度の休み疎水か哲学の道でもあの子と散歩しようかとか・・。秋になればなったで紅葉が気になり、あぁ三千院に紅葉を見に行くか。京都は若くても、中年でも、そして高齢になっても、色んなカタチで楽しめるところがすごいことだ。

*このページの製作年は1999年、データ内容は当時のものです*

撮影は1998年11月26日
場所
京都府京都市左京区大原勝林院町187
交通
JR京都駅からバスで大原方面行き、大原下車とほ約10分
問い合わせ先
実光院075-744-2537

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©MAC FUKUDA All rights reserved. 2005年11月4日