犬はスタスタあるいていく。たとえのら犬であってもであっても目的地があるかのごとく、スタスタと。そんなところが私は大好きで、犬好きだ。ネコはそうはいかない。ノラリクラリと腰をフリフリねりあるく。目的地なんてない、そんな感じじゃない。気分なのだ。のら犬というが、のら猫のほうが野良にはぴったりで、犬はたとえのら犬になってもなんだか目的地を探しているかのように私の目にはうつるのだが。この日も犬がなにかをめざすようにスタコラサッサと私を追い越して丘を登ってゆく。首輪もないでかい犬で、なんだろうか?とその姿に目がいった私だった。
その犬のめざした先は、さくら色したこの丘だった。なんとそこにはそののら犬の飼い主がいた。そしてその犬のこどもらしき子犬も2匹いたのだ。「なんだおまえのら犬じゃなかったのか」旅していると本来の目的とは違った事象に出くわし、それが旅の思い出になったりする。目的地だって変わってしまう。そののら犬は、私に向かってに振り返るとしっぽを振ってうなずいた。そして子犬を引き連れて、さくら色したじゅうたんの中をめざして、またスタスタと歩いていく。私はそれにつれられるかの様にさくら色した丘の中へとついて行く。
その犬がひと息ついた先まで、追いつくと目の前にはさくら色した丘と遠く白樺の新緑とその白い木肌が飛び込んできた。「おまえさん、ここが一番のみはらしだよ」「そうさ。とうさんがみつけたんだ。きれいなながめでしょ」そんな風に犬の親子に言われた。
その見晴らしがここ北海道紋別郡滝上(たきのうえ)町の芝桜公園だ。標高456メートルの丘陵地一面に桜色した絨毯が咲き誇る。もちろん規模は日本一を誇る。芝桜は人工的に植えられたもので自生のものではない。各地にある芝桜の公園も人の手によるもの、西日本では桜の季節に同じように地面一面に芝桜が咲く光景もよく観られる。
滝上町役場015829-2111
※初掲載1998年4月 、データはホームページ制作当時のものです
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