水仙・Narcissusの花を好きな人は多い。ある人は水仙の油絵をオフイスに掛けているのだが、その理由を聞くと「すぐに自分の仕事に自惚れるから、その戒めに意味を込めて水仙の花の絵を掛けている」と花とは似つかぬ風貌で頭をさすった。自惚れの強いナルシストの語源は永遠の美少年ナルキッソスが自分の顔が水面に映ったのに恋して姿が水仙になったと伝えられるギリシャ神話から。このことから自惚れの強い人や自己陶酔型人間を水仙に例えたりする。水仙にとってみれば、あまりありがたくない話かもしれない。
しかし水仙の語源はもう一つある。ギリシャ語で「麻酔」の意味からこの名が付いたという説もある。ヒガンバナ科の水仙の原産国は地中海沿岸の南ヨーロッパで、日本には中国を経て江戸時代に渡来したという説と鎌倉時代に渡来したという説がある。
写真は水仙・Narcissusではなく「ラッパスイセン・daffodil」別名ニセ水仙という地域もあると聞く。こちらも原産国はヨーロッパ、タイトルの詩のイギリスを代表する詩人ワーズワースも愛したというラッパ水仙。お正月にはこのラッパスイセンが玄関や床の間を飾り、いまでは「日本水仙」ともよばれ、水仙はこのラッパスイセンをイメージする人も多い。それもそのはず日本各地で野生化して、日本の風土になじんでいる。この野生化したものが今「水仙郷」として観光地となっている。淡路島の黒岩水仙郷、福井の越前海岸、静岡の伊豆爪木崎などがそうだ。
私もこの「日本水仙」の花は好きだが、地味な花だと思うのに、好きだと言う人は多いのに驚く。水仙でも園芸用にヨーロッパで品種改良されたものも今では多く日本に入って来ている。これはヨーロッパではスイセンの種で異なる花との交配で品種改良されてきたのですが、日本のこの「日本水仙」は種ができず、球根の株分けから増えていく種類だから、このまんまの姿で広く自生している。
写真は兵庫淡路島の南、黒岩水仙郷の「日本水仙」、福井越前海岸の水仙郷もそうだが切り立った海岸沿いの崖にけなげに咲く姿は本当に美しい。淡路島の最高峰標高600メートルの諭鶴羽山(ゆづるはやま)の山麓7万平方メートルに約500万本の日本水仙が咲くという。国生み伝説の「おのころ島」と言われる沼島もすぐ目の前にある。水仙の淡い香りを楽しみながらゆっくりと散歩したい。
「ラッパスイセン・daffodil」の花言葉は尊敬。撮影は1991年1月 場所淡路島三原郡南淡町灘黒岩
交通洲本のバスターミナルからバス1時間 お問い合わせ先黒岩水仙郷0799・56・0720
※初掲載1998年12月 、データは当時のものです
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