清水へ祇園をよぎる桜月夜
こよひ逢う人みなうつくしき
与謝野晶子「みだれ髪」

洛東・祇園の祇園枝垂れ桜

 
 日本でもっとも有名な枝垂れ桜と言えばこの桜であろう。私も大学時代同志社の女のコと花見をしたのがこの桜だった。そして何と君の住む京都は良いところなんだと言っていた。本当は君がいるから好いところだったのでは有るが、そのことは言えなかった。そんな僕の姿を優しく見つめていたのが円山公園のこの枝垂れ桜だ。デパートの京都展なんて言うと必ずこの桜の写 真が広告チラシを飾る。デザイナーが使いたくなるのも解るくらい、均整のとれた美し姿なのだ。1999年からご覧のように幹や枝が舞子さんのように白く塗られた。見物していたツアー客のおばさんは「さすがに京都やね。桜もお化粧してるよ」と唸っていた。確かにそういう風に観える。はじめこの姿を観たときは哀れに感じたが、見慣れるとそのおばさん曰く「さすが京都らしい・・」と思えてきて不思議だ。これは樹勢が環境の悪化で弱ってきたので、石灰を塗って鳥や虫などからの害から守っているそうだ。

  それにしても朝となく、昼となく、そして夜もひっきりなしに人がこの桜をめざすかのようにやって来る。ここは四条河原町で待ちあわせて八坂さんから、上がってきてさあ今日は清水さん(清水寺)のほう散歩するか、それとも平安神宮、南禅寺のほうに行くか、ここでカップルが迷う所なのだ。決めあぐねたふたりは円山公園の長楽館の喫茶店でおしゃべりするのだ。僕もそうしていたのだから良くわかる。「もう桜が咲く春なのに今日は寒いね」なんて女のコが言っている。京都の大学に通 う彼氏に会いに来たのか。こっちとらその寒い中お仕事で桜撮影してんだぞ、そんなこと言うのは野暮。京都は底冷えすると言うが、春のお花見時期でも本当に寒い事が有る。遠方から観光で訪れる方は春先、暖かい格好をしてきたほうが京都は良い所なのだ。桜を見るならこの枝垂れ桜を見てから、平安神宮の方へ行くと良い。清水さんも桜の名所なのだが、感覚的に円山公園のこのしだれ桜が満開の時は平安神宮の桜の方が似てる咲き方をするのでたぶん満開だと思う。

  春の京都はどこかで満開の桜が観れる所なのだ。 さぁ、あなたも京都に行こう。
*このページの製作年は1996年、データ内容は当時のものです*

 

撮影は1995年4月7日
場所
 京都府京都市東山区
円山公園
交通
 阪急京都線
河原町駅下車とほ15分
問い合わせ先
 京都市観光案内所
075-343-6655

祇園枝垂れ桜の周りはこの通り夜桜宴会でにぎわう

祇園の町は春「都をどり」の提灯に灯がともり、暖かい春の風を運んでくれる(写 真上)
「桜ノ咲ク美シキ國ガアッタ」 桜一覧データ次の桜へ
円山公園には現在800本以上の桜が咲く。もっとも多いのはソメイヨシノ。鎌倉時代にはすでに祇園の桜の記録がある。江戸時代には現在の八坂神社さんにヒガン桜の木が植えられ、夜にはかがり火がたかれ「祇園の夜桜」として全国に知れ渡ったと言う。
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