不思議にあまり知られていないことは多い。その中でも例えば自分の住む町の花とかは知っていても、自分の住む都道府県の花なんてそこに住む人でも知らない人の方が多いんじゃないだろうか。京都府「シダレザクラ」北海道「ハマナス」鹿児島「ミヤマキリシマ」青森「リンゴ」岡山「モモ」愛媛「ミカン」和歌山「ウメ」なんて想像できるから良いが、新潟「チューリップ」茨城「バラ」大阪府「サクラソウ」そして兵庫「ノジギク」なのだ。兵庫県民である私ですら数年前まで「なんで?」と思っていたので、ほんと一般
的ではない。
どこに咲いてるの?とみなさんは思われると思う。金鳥かとりせんこうのパッケージのなかにある、あのキクの小さな白い可憐な花が、ノジギクのイメージ通
り。日本に自生していたキクの花のうちのひとつがこの野路菊で、瀬戸内海沿岸や四国、九州に自生している。自生と言うのは勝手に生えてる、と言うことで、人の手で植えたものではない。そんな野生の姿が見られるのが兵庫県姫路の沿岸。
姫路の私の友人に聞くと「昔、的形周辺はすごいくらいの野路菊で遠足にも行った」と言う。今では宅地開発のために少なくなっているが保存活動もある。キクの仲間のなかでも、野菊などと同じで小さくて白い花が群れて咲くので、本当にかわいらしい。ノジギクを見て野菊だと思う人も居るだろうと思う。野菊のなかに野路菊を入れる人もいるが、野菊は野紺菊、山白菊、柚香菊などの山野に野生する菊の総称。
姫路で「菊」ときくと、殿様が大切にしていた10枚の皿のうち1枚がなくなっているのに気づいた女中のお菊さん。策略にあいそれが自分の責任となり、姫路城の井戸に身を投げて死んだ。死んでも納得いかずよなよな「一枚、弐枚、三枚、四枚・・」子ども頃は四枚で終いと喜んで、みんなでキャッキャ言っていた。そして9枚数えたところでお菊の泣き叫ぶ声が毎夜毎夜、その井戸の中から聞こえると。これは怖いです、しまいで終いと言っていたガキにとっても女はコワイと思わせましたから。
中島みゆきサンじゃあーりませんが「うらみーます」の世界です。 それが有名な「番長皿屋敷」。私は遠足で行った姫路城の中でこの「お菊井戸」の存在だけが頭に残り、いまだに姫路城イコールお菊さんなのです。そして女性には恨まれまいと。まわりの人にもそんな人何人か居ました。「遠足もむだ足じゃなかったよなぁ。小学生の身の上で怨みますの世界を実体験できるんだから」と。
キクは別名「亡霊の花」とも言うから不思議。いまから思えばそんな物語が生まれるほど、城の中では色々な人間の交差点ヒューマンスクランブルがあったんだろうなぁと。人はすぐに嬉しいことや悲しいことは忘れるが、怨みに思っていることは決して忘れない。これがお化けの正体だ、お化けはカタチを変え現れる。阪神淡路大震災の時の悲しみは癒えてきたが、しかしうらめしやと思ったことは決して人は忘れていない。人を心底傷つけるのは天災ではなく、人間なのだ。このことを理解していない人が多いのにも、私は驚くのだけれど。
旧暦の重陽の節句9月9日に菊を飾る風習があり、菊は珍重されている。中国では菊は魔物を取り除く不思議な力があると信じられてきた。キクの原産国はアジアで、日本ではこのノジギクの他にノコンギク(野紺菊)リュウノウギク(竜脳菊)などたくさんの種類のキクが自生している。キクの花言葉は「高潔・真実」
撮影は1998年11月 場所姫路市的形福泊 交通山陽電鉄的形駅から徒歩約40分
保存活動として山陽電鉄大塩駅すぐ南にノジギクの花壇がありこちらは手軽に観賞できる。
お問い合わせ先姫路市観光協会0792-21-2511
※初掲載1999年10月 、データは当時のものです
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